無料配布イベントに高確率で現れる謎のおばさん

そのおばさんと邂逅したのは、もう10年以上前のことです。ある食料品の新商品試食イベントを行っていた時に、彼女は現れました。身長は160cm位でけっして綺麗ではない衣服を重ね着しており、白髪で、顔には深い皺が刻まれ60～65歳位のように見えました。わたしが接客コメントと一緒に試食を差し出すと、無言でうけとり、無言で食べ、無言で去っていきました。その時はそのおばさんに対して特に深い印象をもって居なかったのですが、ちょっとそのおばさんの存在を気にするようになったのは、翌日も、翌々日も、試食を受け取りにイベント会場に現れたからです。しかし、それでも「近くに住んでいる暇なおばさんなんだろう」程度にしかとらえていませんでした。

おばさん再度現る

上記のイベントから2か月位経った頃、今度は住宅展示場でカップルや親子向けイベントを行うことになりました。モデルハウスの見学をしてくれた方にお菓子と飲み物を出していたのですが、受付に他の客とは明らかに違う風貌の年配の女性があらわれました。そうです。あのおばさんです。前回の新商品試食イベントの時と全く同じ格好で受付に来ると、スタッフの説明を無言で聞き、なにも言わずにモデルハウスに上がっていきました。そして適当に家の中をまわると、レストスペースでお菓子と飲み物を受け取り、全く表情を変えずに平らげて帰っていきました。ちなみに、この住宅展示場は割と郊外にあり前回の新商品試食イベントの会場とはかなり離れた場所に位置してました。そのため、「近くに住んでいて暇なおばさん」という仮説は崩れ、「暇」なことはあってもどうやら近くに住んでいる訳ではなさそうという事が判明しました。なお、住宅展示場のイベントは2週にわたって土日に行ったのですが、4日間すべてにおばさんが現れました。

何かもらえるイベントには7割以上の確率で来る

その後、同様の「何かもらえる」イベントを行うと、7割以上の確率でそのおばさんが現れるようになりました。

ただ、おばさんは、特に他の来場者に害をなすこともなく、ただ現れてものをもらったり、食べたりして帰って行くだけなので、主催者としても放っておくことが多く。数量限定や参加券が必要な場合以外は何度来ても食べものやサンプルを渡していました。

おばさんは何者なのか？

何度も遭遇するうちに、おばさんがいったい何者なのかが気になり、いろいろと推測をしてみました。

■おばさんの行動範囲：市内の公共交通機関網が整備された場所のイベントにしか現れない。が、公共交通機関がある場所ならかなり遠い場所でも現れる（車でしか行けない郊外や、他の県のイベントでは見かけない）

■情報源：イベントの告知は新聞広告、折込チラシ、フリーペーパー、webと様々な媒体で行っているが、新聞にしか告知を出していない場合も現れたので、新聞は取っているか、または新聞をどこかで読む習慣をもっている。なお、webでしか告知していない場合も来たのだが、イベントの特設サイトの画面をスマホで見せてもらいうことがプレゼントの引き渡し条件だったため、プレゼントはもらえず。

■携帯端末の所持：上記の通りもっていない。

■服装：1年中ほぼ同じ格好。

■同伴者：いない。必ず一人。

■出現頻度：ここ10年以上、なにかもらえるイベントには高確率で出現。

■コミュニケーション：話しかけても必要以上の返事は帰ってこない。（ただし、必要なことにはしっかりと答える。）

…普通に考えれば、ただの偏屈な独居老人なのですが、「なにかもらえるイベント」の情報収集能力や、公共交通機関があれば、かなり遠い会場まで来るその行動力に、それだけでは無いなにかを感じるのです。