今も定番として存在する、多数のマスターピース達
イベント業界には古くから存在し、形を変えつつも基本的な構造や仕組みが変わっていないマスターピース(傑作)と言えるモノやコトが多数存在します。
このシリーズでは、いまでは当たり前になっているそれらを見返し、偉大な先人たちの功績の裏にあったであろう努力やひらめきの跡を見ていきたいと思います。
【第1回】記者会見でよく見る後ろのアレ
記者会見ボード、インタビューボード、バックパネルなどの呼ばれ方をしている、記者会見やスポーツの試合後のインタビューなどで、対象者の後ろに設置される市松模様やロゴが規則的に配置された大型パネルです。
ちなみに英語では“Interview Backdrops”や単に“Backdrops”などと呼ばれることが多いようです。
↓イメージとしてはこんな形のもの。
これは一般的な記者会見ボードの例ですが、大きさや形に特に決まりがあるわけではなく、用途に応じて形状は変化します。
このボードの目的は「写真や映像の中に強制的にロゴ(やスローガン)をうつり込ませること」になります。
そのため、会見を行う人間を写した場合に、ロゴの視認性が確保でき、その上で複数のロゴが(ある程度)均等に画角に収まる形状とデザインが求められます。
上記例の場合は、2社のロゴを配置する前提で、1辺あたり30cmの正方形ブロックを市松に組んだ形にしています。
ブロックは左右8つづつ配置され、2.4m×2.4mの大きさになっています。(男性は175cm、女性はヒールをはいて170cm想定)屋内に設置する場合、商業施設などを除けば天井高は3m以下の場合が多いため、使い勝手と映り込みを考えると高さはこの位に設定することが多いです。
素材などに特別決まりはありませんが、撮影の際に照明やフラッシュが反射してロゴが消えてしまうことを避けるため、印刷面は光沢のある素材を使用しないほうがベターです。また、屋外で使用する場合は、雨で印刷がにじまないようにしたり、風邪でボードが飛ばないような躯体にするなどの対応が必要になります。
例は2社を同面積で配置してますが、複数のロゴを配置したり、場合によってはスポンサードの金額に応じて面積が変わることもあります。
また、上部にその会見やイベントのタイトルを入れることなどもあります。
ここがすごい!
自然に「強制的にスポンサーロゴを露出」させる仕組みを確立。
メディアが被写体を撮影しようとすると、必ずその背後にロゴがあるため、どうしても一緒に映り込むことになる。
さらには、そのデザインを市松にすることで視認性を高めるとともに、スポンサーの出資比率によってロゴの表示割合を変えることもできるなど、非常に洗練された“オフィシャルなアンブッシュ・マーケティング”と言えるのではないでしょうか。
また、特筆すべきはその汎用性の高さです。屋内でも屋内でも使える上に、制作に係る手軽さ、デザインの柔軟性など、まさにマスターピースと言えます。これを考案した方に心からの賛辞を贈らせてほしい。