イベント業界の作業効率化は難しい?
先日も自治体が主導する「働き方改革」に関する業者選定コンペのために、土日を使って企画書を作ってました。 ちなみに、そのコンペは負けました。
この仕事をしていると、一体自分は何をやっているんだと考えることが1か月に5回位あります。私はそんなに多くない方だと思うので、多い方だと月に30~50回くらい考えているんじゃないでしょうか。
イベント業界の構造として、興行系以外、つまり自治体や企業のプロモーションの企画・制作を中心に請け負っている会社の多くは、広告代理店の下で業務を請け負います。
大手広告代理店勤務の女性社員の例の事件以降、働き方改革が強く叫ばれるようになり、いまでは大手各社(表向きは)かなり厳しく業務管理を行っています。
今までの習慣やルールを変える場合には、新しいやり方で今までと同様かそれ以上の生産性を確保できる仕組みを作らなければいけないわけですが、広告業界全体としてまだまだ過去の習慣やルールを一気に変えることは難しく、効率的な作業を行うための構造が出来上がるのはしばらく先の話になりそうです。
つまり、広告代理店の業務時間が短くなった分のしわ寄せが制作会社に降りてくるため今の仕事のやりかたのままでは、イベント制作会社が楽になる事は難しいということです。
たとえば、クライアントから広告代理店や下請けの会社に、今まで10日間かかって100万円で受けていた業務と類似する業務が、今までと同じ10日の納期と100万円予算で降りて、その条件で受けたとします。
働き方改革によって、今まで代理店側で行っていた下調べやコンセプトワークを行う時間が限られるようになったため、それらをこなすためには、「今までと同じように社内でやるけど日数がかかってしまう」か「外注に回してやってもらい、チェックだけする」ことになります。
いずれにせよ、制作会社に降りてくる段階で「納期までの残り日数が少なくなる」か「作業内容が増える」か「他の外注先が増え予算が減る」ということになります。
この状況を本当に改革するためには
超人的な作業スピードを手に入れ、業務量を今までの2倍こなせるようになればいいのですが、現実的には難しい状況です。ですので、これから変えていかなくてはいけないのは以下のところになります。
「仕事を出す方」「仕事を受ける方」両方の意識改革と理解促進
納期…いままでは、残業や長時間労働が前提で納品時間が組まれていました。というか、広告代理店がその納期でやってしまっていたし、やらせていた、さらに制作会社もそれで受けていたという側面も大きい。良いものをつくるにはそれなりに時間がかかるということを双方理解し、納期を定めていかないと状況は変わらない。
予算と内容のバランス…コンペの前に下見積もりを取っておきながら、実際に仕様書を見ると見積もりの7割くらいでやれというクライアントの方!モノの値段には理由があります。モノを創るためには時間がかかるのです。見積もりの7割で提示されて受けてしまう代理店や制作会社の方!いいものを創るためには時間とお金がかかることはあなたが一番分かっていないとダメですよ。
余裕(無駄の排除)…われわれに一番足りないのが余裕だと思います。というかあきらかに無駄な作業を無くせばだいぶ余裕が生まれるはず。海外のイベント制作会社と一緒に仕事をすることがたまにあるのですが、どの国も結構いい加減です。(比較的真面目と思われている西ヨーロッパの国々でも全然日本よりいい感じに力が抜けてます。ただ今までの中でブラジルの適当さは群を抜いて本当にすごいです。)それでいてアウトプットにどれくらい差が出るかというと、「お客が感じる範囲」ではほとんど差は出ないです。つまり、自分達だけが満足してるこだわりが大きいということです。これを無駄ととらえるかどうかは人によって考え方がそれぞれですが、とにかく海外のイベント会社と比べると異質なのは明らかに日本です。
最後に、以前に比べると多少マシになりましたが、「考える作業」に対価を支払わない(支払うべき理由を理解してない)という習慣を無くさないと本当にこの業界は終わってしまうと思います。