「一斉に水を張った洗面器に顔をつっこみ、我慢できなくて顔を上げた奴から負けていく」
麻雀の本質を適格にとらえた表現で、マンガやらIT企業の某社長の本などで紹介されている金言です。
私は麻雀をするのですが、そのゲーム性や戦略には、仕事も含め普段の生活の中の色々な物事に応用できることが多数内包されています。
仕事上、自治体や企業が発注者となる「企画コンペ」に参加することが多数あるのですが、これも非常に麻雀に似ています。ざっと挙げると「不平等な条件でスタート」し「相手の出方を伺いながら」、「刻一刻と変わる状況に応じて戦略をたて」、「相手を出し抜いて」勝たなくてはいけない。尚、「勝ちが見込めない場合は降りる」という選択もある。といったところでしょうか。
他の記事とちょっと毛色が変わりますが、ここでは企画コンペを麻雀に例えて紹介したいと思います。
不平等な条件でスタート
麻雀では、スタート時に牌が積まれている「山」から、サイコロの出目に沿って牌を取り、最初の自分の手の状況が決まります。つまり不平等な条件でのスタートです。企画コンペでも、企業や自治体から4社程度に参加を打診され、各参加会社に「オリエンシート」(コンペの目的や条件、予算などが記載されたもの)が提示され、そこから不平等な条件のもと競争が始まります。
「オリエンシート」に記載された条件に沿って企画を立てるのだから平等なのでは?と思うかもしれませんが、全然そんなことは有りません。なぜなら、そのオリエンシート自体を他の競合会社が書いているなんてことがざらにあるからです。
さらに、普段の付き合いの中で、「勝ちのポイント」をつかんでいる会社があったり、審査員へのロビー活動で先んじている会社があったりします。もちろんそこが各会社の「営業力」そのものなので、最初から「手」が入っていない会社は企画の中で多少の無理をしたり、「降り」に回ったり(付き合い上、不参加は出来ないため、参加だけはする)するわけです。
事業予算が大きくなれば、勝つ(上がる)のは難しくなる
コンペの事業予算が、大きくなれば当然参加者も必死でプレゼン企画を立ててくるため、そう簡単には勝てません。麻雀の上がり役でたとえるなら
400万ならリー・ヅモ・ドラ1(4000点)
800万なら満貫(8000点)
3200万ならなら役満(32000点)
9600万なら親のダブル役満(96000点)
といった感じでしょうか。(※地方と首都圏ではレートが10倍変わります。)
麻雀の場合4名で競合し、1人の「親」と3人の「子」で、親は輪番で回っていく仕組みです。親のメリットは、得点能力が子の1.5倍あり(同じ役でも親の方が1.5倍多く点数をもらえる)、上がり続ければ親を継続できるということです。
企画コンペで言うなら、親の場合はその点数に到達するための条件が子よりも緩い(1200万予算のコンペで勝利するために、子なら6つの課題クリアが必要が、親なら4つで済む。=1.5倍の得点能力がある)と言えます。ただし現実の企画コンペでは案件ごとに「親」にあたる会社が1社か2社参加していることが常です。そこで「親」と組めれば勝ちの確率も上がります。
麻雀では親は輪番ですが、現実には順番に回ってくるわけではなく、常に親をやっている会社もあったり、たまに親が回ってきた時に、会心の手作りをしていたら、あっさり子に取られたりと、まぁ、麻雀同様なかなか思い通りにはいきませんね。
地域や一つの企業から予算を奪い合う
麻雀は参加する4人の持ち点が25000点でスタートすることがほとんどです。持ち点を合計すると10万点がその場にあり、それをお互いが奪いあうため「ゼロ和ゲーム」の典型として例に挙げられることも多く見受けられます。
実際の企画コンペでは、負けた時に勝った企業に点棒をとられることはないのだけど、自治体や企業の年間の予算が決まっている中それを4社で奪い合うと考えれば、場に存在する点棒=年間予算と言えるため、例えば、年間10億円の予算が8回に分けてコンペになった場合、ちょうど半荘(8ゲーム)を4社で競うことになり、最後に4社それぞれが獲得できる期待値は2.5億円ずつになります。
一斉に水を張った洗面器に顔をつっこみ、我慢できなくて顔を上げた奴から負けていく
冒頭でも書きましたが、企画コンペは、よーいドンで、参加者が一斉に水を張った洗面器に顔を突っ込むようなものです。相手の状況は断片的にしか伺い知れず、相手がどうなっているのかを、息を止め脂汗を垂らしながらじっと我慢して耐えるような状況です。そして、企画書を書いている途中、我慢できなくて「こんなもんでいいか」と、顔を上げたヤツから負けが決まっていきます。我慢して我慢して「もうだいじょうぶだろ」と顔を上げたら、もっと我慢してる奴がいたり。
ええ、そうです。この記事を書いている今が、まさに集中力が切れて顔を上げそうな状況なのです…。