主催者発表のイベント来場者数は本当なのか?

イベント来場者数の算出方法と発表

イベントを主催すると、ほとんどの場合来場者の集計という作業が出てきます。規模の大小にかかわらず、そのイベントに来場した人数というのはイベントの成否を判断する上で最も重要な指標と言えます。

屋内で行う入場券引き換え型のイベントや、招待制のイベントの場合は、初めからおおよその人数の把握ができており、さらに受付を通してチェックを行うためかなり正確な数字が出てきます。しかし、屋外で行う受付を設けない「お祭り」や「入場無料イベント」といった催事の場合、正確な来場者数を把握することは困難です。

こういった屋外でのイベントは、どのように来場者数を集計しているのか。実はこれといった集計方法は決まっておらず、イベント主催者がそれぞれ独自の方法で集計をしています。

ちなみに、特に大きなお祭りは観光資源としてとても重要な役割をもっているため、お祭りのコンテンツパワーを計る指標の一つ「人出」を明確な基準の元算出すべく、お祭りの人出を数えるガイドラインが96年に日本観光協会によってつくられました。その算出方法は「一定範囲を定めてその範囲内を最盛時間に移動しながら利用者を数え、これに回転数と全面積をかけ、さらに一定範囲の面積で割る」となっており、各主催者に通達はされているのですが、実際のところ、どれだけ使われているかは不明です。

屋外イベント(受付無し)での来場者数算出方法の例

具体的な算出方法についてご紹介いたします。

方法1:日本観光協会方式(ガイドライン方式)

上記でも説明してますがガイドラインにある「一定範囲を定めてその範囲内を最盛時間に移動しながら利用者を数え、これに回転数と全面積をかけ、さらに一定範囲の面積で割って調査日の入込客数を推計」する方法。

例)メイン部500㎡の最盛時1時間当たりの来場者が1,000人、本番6時間(回転)、全体面積が7,000㎡とします。

その場合 1,000 × 6 × 7,000 ÷ 500 = 84,000人 となります。

ベースとなる人数が最盛時の人出を元に計算しているため、「仮に、全時間帯・全エリアに同じだけ人が集まっていればMAXでこれだけは来ているだろう」という計算式と言えます。正確な人数に近いかどうかというと、かなり盛った数字になりますが、目視よりは全然実数に近い数にはなると思いますし、なにより算出根拠やエビデンスの公開を求めれれた際にも、後ろめたさを感じずに「日本観光協会のガイドラインにのっとり集計してます」と言えるところがメリットといえます。

方法2:仙台七夕まつり方式(サンプル集計方式)

仙台七夕まつりが例年実施している方式で、具体的には「祭り会場となるメインの通りで、期間中毎日9:00から22:00まで数取り器(野鳥の会がつかっているアレ)で集計し、その数をベースとして他の通りでも同じだけの人出があったと推定し、全体の人出を算出する。」となっています。

具体的な計算式が分からないため何とも言えませんが、やりかたは方法1にかなり近く、さらに1日中集計をおこなっているため、精度は高いと思われます。

方法3:青森ねぶた祭方式(積算方式)

青森ねぶた祭が実施している方式で、「ホテル・旅館等宿泊施設の利用者の数、高速道路や駅の利用状況、駐車場の利用者数を足し、そこに当日の会場の込み具合を見て算出する。」となっています。

催事の特性上当日会場付近の宿泊施設や駐車場などを利用する人はほぼねぶたを見に来ていると推測されますし、平常時の数字が分かれば、その差から上積みされている数字も算出できるため、これも数字的にはかなり正確なものになっていると思われます。

方法4:目視方式(独自計算方式)

主催者が目視で“だいたいこのくらいだろう”とするのが「目視方式」です。

ただし、完全に目視だけに頼っている場合は少ないのではないでしょうか。例えば「うちわ」サンプリングを3か所で行い、1時間に配った数を元におおよその数字を想定し、そこに目視によるなんらかの補正を掛けるなど「算出根拠」+「目視による感覚」という事が多いと思います。

私の経験上、この方式の場合は主催者側(または運営会社側)による「少しでも来場者を多く見せたい」(というか見せないとヤバイ)という思いから変なバイアスがかかることがよくあります。

例えば、「算出根拠」となるサンプリングの数を会場の現場責任者が水増しして報告⇒報告を受けた主催者がさらに水増し。そこに「目視による補正」で何故か数字が2倍に。といった具合にまるで、敵を倒すともっと強い敵が現れるバトルマンガのようなインフレが起きたりします。

主催者発表のイベント来場者数は本当なのか?

正直なところ、本当かどうかは分かりません。

なにせ、本当に正確な数字は誰も把握できないため、明らかにおかしいという数字にならない限り「そんなもんか」で終わることがほとんどで、祭りへの出展者(出店や売店など)も、人出に対しての販売予測を大幅に下回らなければ(儲かれば)そんなに問題にしません。

また、発表する来場者数が「盛り上がっているイメージ」を作り出している一面もあるため特に伝統的なイベントなどの場合は、明らかにおかしい数字を発表出来ないなどの諸事情があったりします。

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