2020年、イベントのデジタルシフトについて考える。【2つの方向性へ変化】

イベントの「デジタルシフト」ってなんだろう

一般的にデジタルシフトとは、「IoTやAIなどの技術発展により従来に比べ格段に多くの情報を統合出来るようになり、それら統合した情報を一度に取り扱えるようになること」と言われています。

消費者はスマートフォンなどの端末を使ってさらに膨大な量の情報をいつでも取得できるようになるとともに、インターネットを介した情報との接点は今後ますます広がり、ありとあらゆる場面に繋がっていくでしょう。

そして消費者が限られた時間を使って膨大な選択肢や情報の中から「イベント」を選択するためには、“他の選択肢に埋もれない何らかの進化”=イベントにおけるデジタルシフトが必要になっていくと思われます。

コロナウイルス禍によって訪れるであろう急激な変化

コロナウイルスの爆発的感染拡大によって、人の移動が抑制され在宅やサテライトオフィスでのリモートワークを取り入れる企業が一気に増えました。突如として突き付けられたこの状況が、図らずも日本のビジネス環境のデジタルシフトを加速させることは間違いないでしょう。ともすれば存外近いうちに今後の働き方のスタンダードになっていくかもしれません。

また、5Gの運用開始に伴い、動画コンテンツが今よりもさらに身近なものになったり、家の中にある電化製品すべてと通信できるようになるなど、高速・大容量・情報通信社会がすぐそこに迫っています。

そんな社会環境や人々の意識が変容するなか、コミュニケーションのあり方も変わっていくと思われます。もともとイベントは「特定の場所と時間」に消費者が訪れないと成立しないコミュニケーションであり、だからこそ、そこに特別な価値が生み出されるものです。イベントは言うなればコミュニケーションそのものであり、社会や意識の変化によってそれに即した形に変わっていくことでしょう。

あのイベントで起こった象徴的な出来事

2019年の東京モーターショーは「OPEN FUTURE」のテーマのもと、人の移動を効率化するテクノロジー『スマートモビリティ』や、電気自動車やAIを搭載したコネクテッドカーといった新しい技術の紹介だけではなく、業界を超えた様々な企業・団体が参加しモビリティの領域にとどまらない「くらしの未来」にまでショーの領域を拡張して実施されました。

つまり移動手段としてのクルマの紹介だけではなく、移動に関連する様々なテクノロジーの総合見本市へ大きく舵を切ったといえます。ただし、これはショー自体が遠隔化や仮想化されるものではなく、テーマとしてテクノロジーとの融合を行い展示領域が拡大したものになります。

では、イベントのテーマやコンテンツのデジタル化のみならず、『イベントそのものが仮想体験化』していく可能性はあるのでしょうか?

イベントが向かう2つの方向性

2010年代以降の間にイベントプロモーション業界では様々なデジタルテクノロジーが登場し定着してきました。例としては、2012年の東京駅丸の内駅舎での実施以降プロジェクションマッピングが割と身近になったり、2018年頃からイベントでの電子決済化が徐々に進みだし、eスポーツが話題になりだしたのもこのころからです。

いずれも、デジタルを活用したサービスやコンテンツの一部であり、イベントそのもの仮想体験化はまだ一般化されてはいない状況ですが、技術的には仮想体験イベントが一般化するための環境は整ってきます。もし広く受け入れられれば、プラットフォームの整備が進み、導入費用も低くなりスタンダード化もそんなに遠い未来の話ではないでしょう。

では、人々はイベントになにを求めているのか?

仮に今までのイベントの価値観である『その場所・その時間でしかできない特別な体験』が変わらないとすれば、デジタル化によってむしろ『実際に体験できることの価値』がさらに高まっていくのではないかと考えます。

そしてその一方でそんなハードルの高さを敬遠し、今のデジタル環境を最大限に活用した『気軽にできる体験の共有』へのニーズも同時に発生すると思われます。

つまり、デジタルシフトでイベントの形態は大きく2つの方向に進むと考えられます。

1つが、手軽にたくさんの人間がMR(Mixed Reality:複合現実)で参加するような、『現実世界に仮想世界が融合するイベント』

もう1つが、参加者の属性や嗜好に合わせて丁寧に作りこまれた、五感に訴える『体験価値の高いイベント』です。

今後イベント用デバイスの整備や、通信環境が整っていく中でどの程度のデジタル化が進むかその答えは見えてくるかとは思いますが、ひとまず現状で考えられるイベントの方向性は大きくこの2つにシフトしていくのではないでしょうか。

関連記事

ページ上部へ戻る