【赤字イベントの収支例】失敗しないために知っておきたい予算管理のポイント

イベントが赤字になる要素は3つ

通常、イベントが赤字になるのはおおよそ次の3パターンです。

1.売り上げが足りず失敗した

2.予算管理で失敗した

3.アクシデントに見舞われた

今思い出してもぞっとするのですが、私は1から3のパターンいずれも経験しており、かなり痛い目にあったことがあります。3のアクシデントに関しては、自分の力ではどうすることもできなかったことがほとんどのため、「イベント保険に入っておくといい」位しかアドバイスはできませんが、1、2の経験をもとに、「どうして赤字になったのか」例を挙げながら、失敗しないための予算管理のポイントを解説していきたいと思います。

 

例:売り上げが足りず、さらに予算管理でも失敗したイベント

ここで紹介する赤字例は、売り上げ不足&予算管理ミスが重なった、自治体主催のスポーツイベントです。(実際とは金額や内容を変えています。)

この時のざっくりとした予算の内訳を説明すると「自治体の補助金」+「ブース出展料」+「協賛金」が原資(イベント予算)となり、そこから「会場費」「運営費」「施工費」「コンテンツ費」「広告費」などを引いた額が、元受けの広告代理店と二次請けの我々の利益になるというものです。

まずは当初の収支計画を見てください。

次が実際の収支です。

はい。とても恐ろしいことになっています。

収入として見込んでいた、出展料で500万、協賛金で900万がショートしてます。さらには、収入が減っているくせに、運営費で300万、施工費で300万余計にかかっており、当初の予定では1500万残るはずが、500万円の赤字になってます。…書いているだけでも胃液が逆流しそうです。

 

何故こうなったのか

初めに、自治体から「スポーツイベント」の実施に関する公示があり、広告代理店から一緒に組んでコンペに参加しないかと誘いがきました。通常この手の案件は、複数の参加者が提出した企画に対して主催者(この場合は公示した自治体)が審査を行い、最も優れた企画を提案した会社が受託する「プロポーザル方式」をとっています。つまり、ほかの参加会社より「面白い企画」を出さないと勝てないため、各社必死で知恵を絞ってきます。我々も人が集まりそうなゲストであったり、参加者が楽しめる体験型のコンテンツを色々と盛り込み、自分たちの予算を確保できるラインを見極めて企画書を提出しました。

結果、4社競合の中で1位の評価を得て、受託に至ったのですが、企画書を提出する時点ですでに2つのミスを犯していました。

1つ目は、過去の類似イベントの傾向から出展者とスポンサーは集まるだろうという楽観的な予測で予算を組み立てたことです。

出展者とは、イベントのブースを出して参加する企業や団体のことで、これには「出展料」が発生し、イベント予算の収入源となります。また、スポンサーからは「協賛金」をもらってそのイベント内で企業のイメージ訴求やプロモーション(例えば〇〇プレゼンツ△△スポーツフェスティバルといったタイトルの前に企業名を入れた「冠協賛」など)を行うのですが、これらは、同じイベントを何回か行っているのであれば、おおよその予測は立つのですが、このイベントは初めて行うもので、過去に実績がなく、出展社とスポンサーは過去の同じようなイベントの傾向から「これくらいは集まるだろう」と予想して予算を組んでいたのです。この見込みの甘さが後々の大きな悲劇につながっていきました。

2つ目は、コンペに勝つために「金がかかって面白い企画」を詰め込みすぎたせいで、ほぼ予備費を取っていなかったことです。

企画コンペで勝つためには、他の競合会社より「面白い」企画を出して、集客が見込めるものにしなくてはいけません。当然のことながらコンペに参加した各社とも、予算のなかで懸命に面白そうなネタを集めて企画に盛り込んでくるのですが、大抵の場合「面白くて集客が見込める」コンテンツは金がかかります。我々もギリギリのラインまでそれらを詰め込んで勝負したため、ほとんど予備費をもっていませんでした。というか、予備費は出展料と協賛金で賄って、あわよくば出展・協賛金が予定額より多くなったら丸儲けだなどど甘すぎることも考えていたのです。

ただし、これら2つのミスに関していうと、実は初めはそんなに致命的なものになるとは考えていませんでした。というのも、「出展料」と「協賛金」ありきで予算を組み立てなくてはいけないイベントに関しては、途中のお金の集まり具合に応じて内容の変更を行っていき、赤字が出ないように最終調整するというのが一般的なやり方だからです。特に自治体主催のイベントなどは、赤字になったりしたら議会で突っ込まれたりと彼らにとっても色々と面倒な事が起きたりします。そのため、もし出展社と協賛が集まらなかったら、途中で計画変更ができるだろうと考えていたのです。彼らと実際にイベントの準備を始めるまでは。

そして、自治体へ代理店と一緒に出向いて最初の打合せで自治体担当者からまず言われたことは、「最初にそちらが提示した予算でイベントをやり切れ。企画書に書いたことはすべて必ずやれ。」でした。私としては、「むこうにもメンツがあるし、こちらにやる気を出させるために心構えとしてはそう言うよな」と思いながら話を聞いて、代理店担当者も「出来る限り努力します」なんて返してたんですが、そこで「努力とかではなく、御社がこの数だけ出展社と協賛金をとりますと言って企画を出してきたんだから、その通り実行してください。」とぴしゃりとはねつけられました。

そもそも「コンペ仕様書」の中に、協賛金に関して初めに提示した見込み額に関して受託者が責任を負うといった事項は一切書いておらず、協賛金額の確約はできないことは事前に自治体担当者も理解はしているという前提で参加したコンペだったのですが、その後も彼らは「書いたことはやれ」の1点張りでどうしようもない状況になっていったのです。

その後、出展社とスポンサーを確保できないまま時間が経ち、結局代理店が不足分を補填してでも提案したコンテンツをやらなければいけなくなってしまいました。(代理店の偉い人が出てきて話し合いをしたりもしたのですが、自治体とは今後も付き合いが必要なため、政治的な判断があったと思われます。)

出展や協賛については「相手がある話」であるため、いくらこちらが頑張って営業しても相手にメリットがなければ取れないものは取れません。そのため、この手のイベントでは「この時期にここまでお金が集まったらAプラン」「ここまでしか集まらなければBプラン」と収入見込みに合わせて、主催者と一緒になって予算管理をしてフレキシブルな対応をとらなくてはいけないのですが、それを一番最初に相手側と決めきれなかったことがこの時の一番の失敗だったといえます。

代理店担当者としては当初「協賛金は自社の他クライアントに営業すれば何とかなるだろう」と考えていたらしいのですが、結局そんなに甘くはなく、当初1000万取るはずだった協賛金は100万しか確保できず、ブース出展者も予定の3/4しか集められませんでした。当初6000万を見込んでいた原資は、最終的には4600万と約3/4になってしまいます。さらに、主催者のみならず、周辺の企業や住民と実施に向けた交渉を進めていく中で、運営にかかる費用(特に警備費用)が当初の見込みよりも多くかかってしまい、造作物に関しても同様で後から後からから、どうしても必要なものが湯水のようにわいてきて、結局ここで合計600万の追加経費が掛かってしまいました。ここははじめに予備費をいくらかでも見ておけば多少の吸収はできた部分です。

こうして500万円の赤字が生まれたのです。

この経験から、皆さんに伝えたいイベントの「売り上げ・収支管理」で失敗しないためのアドバイスは3つ

事前の収支計画は何度もシミュレーションを行う(足りないお金は何とかなると考えない。なんともならないことがほとんど。)

イベントを作る人間全員が意識を共有して、状況に応じて方向・方針の修正を行う(そのような関係性を一番初めに築く)

万が一に備え2重3重の逃げ道(代替案)を確保し、万が一が起きた時それを実行できる環境を整えておく

です。ぜひとも赤字を出さないよう気を付けてください。