このコラムでは「イベント業界」「広告業界」にまつわる様々な“あるある”を会話形式で紹介していきます。
今回は『企画書制作篇1 ~初回打合せ~』です。
彼らが日々繰り広げている日常の中の一コマを切り出して、よく起こる事やよく使われる用語を解説していきたいと思います。
舞台はとある地方都市。会話は、クライアントからオリエンシート(企画書の仕様をまとめた要綱)が配布され、広告代理店の会議室で初回の打合せを行うところから始まります。ちなみに、以下の会話は限りなく制作会社の目線で書かれています。
初回打合せ
制作会社プランナーA(以下A)「なにこれ、この内容でバジェット500万しかないの?しかも税込み」
広告代理店営業B(以下B)「前回、競合のZ社がそこの波の扱いが欲しくて、赤でやっちゃって、それが実績になってんのよ。」「だけど、結局波の扱いはX社のままで、結局Z社は赤字でやって終わったという次第。」
A「えー!?どうすんのBさん、ざっと見ても規定演技をこなすだけでギリだよ。自由演技は無理」
B「俺もやりたくないんだけど、あそことは関係を切れないから、出さざるをえない」
A「わかりました。まぁ何か考えますよ。多分Bさんのところにはほとんど残らないけどいいの?」
B「そこもなんとか10%は確保したい」
A「…了解。ところで一つ気になっているんだけど、このオリエンシート企画書の提出日が書いてないんだけどいつになるの?」
B「それなんだけど、来週の月曜提出なんだよね」
A「えぇ!?この内容でそんなスケジュールなの??裏も取れないよ」
B「実は諸般の事情があって、あっためてたら、こんな時期になっちゃたんだよね」
A(こいつ、いけしゃあしゃあと…)「…じゃ、媒体以外のパートははこちらでということで、一旦明後日までにページネーション組みます。」
B「よろしく!」
と、制作会社と広告代理店の間ではこんな感じの打合せが繰り広げられてます。
それでは、それぞれ太字になっている用語とシチュエーションについて解説していきましょう。
用語とシチュエーション解説
バジェット…予算のこと。ここでは、オリエンシート(仕様書)に記載されている、この事業全体の予算の事をさします。大抵の場合、広告代理店はバジェットをオープンにして制作会社と打合せを行いますが、これを隠して制作会社分の予算を提示することもあります。これは代理店の営業の個人の判断になります。
税込み…官公庁や公的機関・その他公益団体などの仕様書では予算が税込みで提示されることがよくあります。ぱっと見て割とあるかなと思っても、実はそこから10%分の税金を引いて考えなければいけません。
波の扱い…波=電波(TVやラジオCM)のこと。電波の扱いは今だ広告代理店の一番の収益源です。
赤でやっちゃって、それが実績になって…よくあることです。クライアントは過去の実績を基に仕様書を組むので、以前やった会社が赤字覚悟でめちゃくちゃな内容で受託すると、こういったことが起こります。なお、波の扱いが欲しくて、またはこれをやればセットで波がついてくるので、赤字または利益度外視でイベントをやるということは広告代理店ではよくあります。
規定演技…オリエンシートに記載されている業務の仕様。やらなくてはいけないこと。
自由演技…オリエンシートに記載されていない自由提案。やらなくてもいいけど企画の差別化や加点対象となること。
あそことは関係を切れない…広告代理店にも様々なしがらみや付き合いがあります。特に地方ではお金をもっているクライアントの数が限られているため、いやでも付き合わなければいけないこともあります。
10%…会社に怒られない最低限の利益率です。ただイベントは生ものですので10%に設定していると、想定外のことが起こり大抵10%を割り込みます。
来週の月曜…クライアントはよく月曜AMに提出とか言ってきます。暗に土日休むなと言っているようですが真意は分かりません。
裏も取れない…イベントやプロモーションの企画は、実際にできるか出演できるかの確認が必要になる事がほとんどです。ちなみに、なんとかなるだろと思って「決定後調整」などと書いて企画書を提出して、受託した場合、実はできなかったり、出演不可だったりして大変なことになったりします。
あっためて…オリエンシートを受け取ってから放置すること。忙しくてほったらかしにしていて、ふと思い出してケツに火が付いた状態で制作会社に相談が来ることもよくあります。
媒体以外のパート…地方の場合は、広告代理店が企画書の広告出稿計画のページをつくって、それ以外はすべて制作会社がつくるということが良くあります。
ページネーション…ページ割。企画書のどのページにどの内容を配置するかの全体構成のこと。実際のプレゼンの進行を考えながら構成を組みます。企画書によってはページ制限があったりするため一番初めに行う作業です。
以上、いかがでしたでしょうか。それでは他のあるあるをお楽しみに。