在庫を抱えないビジネスモデル【イベント制作会社】は儲かる商売なのか?
イベント制作会社は儲かるビジネスか?
ホリエモンこと堀江貴文氏が提唱している、儲かるビジネスの4原則というものがあります。
- 在庫を持たない
- 利益率が高い
- 定期的に一定額の収入が見込める
- 少ない資本で始められる
堀江氏は「この4つの中で当てはまっている数が多ければ多いほど、そのビジネスはうまくいきやすい」と言っているのですが、 イベント制作会社(イベントプロダクション)は、条件を満たす項目の方が多く、原則に照らし合わせればうまくいきやすい、いわゆる『儲かる』ビジネスモデルということになります。
はたして、イベント制作会社は本当に儲かるのか?
今回の記事では、この4つの原則に当てはまる点と、当てはまらない点、そしてイベント業で利益を出すためのポイントと、抱えるリスクについて考え、儲かるかどうかを解説していきたいと思います。
4つの原則にどこが当てはまる?
1.在庫を持たない業態
多くのイベント制作会社では、在庫を抱えない業態で経営を行っています。会社によって多少の差異はありますが、基本的にはクライアントから「こういうイベントをこの予算で行いたい」という依頼があり、初めて業務が発生します。そのため、その業務に必要な資材は、提示された予算の中で採算がとれる範囲内で購入を行います。ですので、処理しきれない過剰な在庫が蓄積されることはほとんどありません。
例えばオリジナルグッズを作ってそれを路上サンプリングするといった場合なら、基本的に代理店やクライアントに一括請求し、配り切れず余った場合は、クライアントに返却するか廃棄するため、そのグッズが制作会社の在庫になる事はありません。
2.利益率が高い
イベント制作会社はフィー(作業報酬)制の業態です。フィーとは簡単にいうと専門的な作業に対して発生する報酬のことで、イベント業で言えば、企画書の作成やプロジェクトの事業設計を行う『企画費』、事業全体の監督と管理を行う『プロデュース(ディレクション)費』、マニュアルや台本の『制作費』、イベントの現場での『人件費』などが当てはまります。
もちろん売り上げの項目はこれ以外にもありますが、イベント制作会社の利益の多くを占めるのはこれら『人間の作業費』になります。ですので、自社内のスタッフで作業を行えば仕入れが発生しないため、内製できればできるほど利益率は高くなっていきます。
3.定期的に一定額の収入が見込める
これは、ちょっと微妙です。基本的にイベントは1回やれば終わりの事業で、その1回を継続して受注し続けなければいけません。そのため、定期的にの仕事を回してもらえる環境を構築すること、つまり代理店や同業との関係づくりが重要になります。
4.少ない資本で始められる
以前フリーランスディレクターの記事でもお伝えしましたが、イベント制作会社は基本的には体一つあれば独立できる業種です。売上の核を「制作」や「現場での人件費」に据えて経営を行えば仕入れはあまり発生せず、かなりの粗利を残すことが出来ます。
儲けの障害になることと、その解決方法を考える。
ここまで書いてきた内容を見ると、「儲かるビジネス4原則」に3つ当てはまっているため、イベント制作会社は儲かるのかと思いきや、これがさほど儲かりません…。それは主に次のような理由があります。
- 量産が出来ない
- 競合が多い
- 業界単価が低い
1つずつ解説していきます。
・量産が出来ない
基本的には人件費商売のため「作業時間=儲け」となります。そのため、たくさん稼ぐためには「たくさんの時間働く」か「たくさんの人間を働かせる」かしかありません。
また、イベントは「○○戦隊ショー」などのパッケージショーを除き、都度オーダーメイドに近い形で作っていかなければいけないため、けっこうな労力が必要になります。(もちろん、パッケージショーの方々はその方々で、クオリティを維持するために稽古やらなんやらで相当の労力をかけています。)
そのため、1人が同時に多数の案件を処理することが難しく、儲けるためには「案件の選択」=「 効率的に稼げる仕事を受注する」ことがとても重要になってきます。しかし効率的に稼げる案件には限りがあり、そのような案件ばかりを続けて受注することはなかなか難しいのが現状です。
ある程度内容と利益のバランスを見ながら様々な種類の案件を受託していかなければいけないため、どうしても継続的にとびぬけた利益を出し続けることが難しいという市場的な側面があります。
・競合が多い
割と簡単に独立起業できることとも関連してきますが、イベント制作会社は結構競合が多い業種です。独立するのに何の資格もいりませんし、ローコストで始めることが出来るため、地方に行ってもほとんどのエリアに複数のイベント制作会社があります。
ですので、儲けるためには「そのイベント会社に頼む理由」を持たなくてはいけません。この差別化をどのようにするかがポイントとなってきます。スペシャリストの集団としてある一定ジャンルのイベントを専門に請け負うのか、はたまたゼネラリストの集団として様々なイベントを包括的に請け負って、全体の管理費(プロデュースフィー)を含んで利益を大きくしていくのか、などなかなか難しいところです。
・業界単価が低い
これが一番儲からない理由です。とにかく業界単価がかなり低い。
最近はだいぶましになってきましたが、少し前まで企画書を書いてもコンペで勝てなければ企画費は払わないという広告代理店が普通にありましたし、デザインや制作業務に関して「なんで形のないモノに金が発生するの?」と考えるクライアントなども多くいました。(信じられないかもしれませんが、チラシを印刷するとデザインは無料でついてくると思っている人も結構いるのです)
結局のところ、日本の広告業界というのは電通さんが作ったもので、テレビなどの電波料から一定割合を手数料として貰う「コミッション制」のビジネスモデルがその根幹をなしています。(いまだにです)「フィー制」のビジネスモデルであるイベント制作については、はっきりいうと『テレビなどの媒体費のおまけ』程度の扱いだったため、そりゃクライアントに積極的な働きかけをするはずもありません。 広告代理店にしてみれば面倒なだけで儲かりませんから。
また、昨今の働き方改革の波は、当然イベント業界にも押し寄せてきています。今の業界単価のままで、働き方を変える(規定時間内で作業を完了させる)ことは非常に難しく、どこかで一気に制作単価を上げないと本当のジリ貧になっていく恐れがあります。
イベント制作会社で儲けるためには
イベントは1人がこなせる案件数に限りがある以上、利益をアップさせるには、作業単価を上げるしか方法はありません。
そのための一番シンプルな手段は、独自性を持つことです。
イベント現場では『替えの利かないディレクター』であったり『勝てる企画書を書くプランナー』であったといった「人的な独自性」
また『普通は外部の協力会社に頼まなくてはできないコンテンツをセットでイベントができる』『エリア内で自社しかできないイベントフォーマットを有している』といった「提供品目の独自性」
ある程度の初期投資やリスクを背負わなくてはいけませんが、「○○物産展」のような一定のファン層を抱えて、浸透したブランド力を持ち、長期間提供ができる「独自のコンテンツホルダー化」などです。
冒頭の4原則の中で1つだけ“微妙”となっていた「3.定期的に一定額の収入が見込める 」ですが、そこをカバーするのがまさにこの、他社が真似出来ない独自性です。これを獲得することが出来れば、価格競争に巻き込まれず、継続的に一定以上の儲けを出せる経営につながるはずです。